第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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ムンプスウイルス感染症による流行性耳下腺炎の合併症について髄膜炎,精巣炎,内耳炎などが広く知られており,耳鼻咽喉科領域では高度感音難聴やめまいなどの内耳障害が問題となる.近年これら合併症に加え,顎下腺や周囲軟部組織に波及した炎症反応によって咽喉頭浮腫を来す報告が国内で報告されている.今回我々はムンプスに伴う咽喉頭浮腫から呼吸困難を訴え,入院加療を要した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
症例は38歳女性.4日前からの両側耳下部および顎下部の腫脹と疼痛がみられていたが,呼吸困難も自覚するようになり当科受診となった.ムンプス感染歴はなく,小児等との接触歴もみられていなかった.視触診上,両側耳下腺・顎下腺の腫大,頸部リンパ節腫脹がみられ,同部位に圧痛を認めた.喉頭内視鏡検査にて喉頭蓋,両側披裂部に浮腫状変化を認め,上気道狭窄がみられたため,緊急入院とした.血液検査で血清アミラーゼ1050 IU/lと上昇を認め,白血球・CRPの上昇は認めなかった.CT検査では両側耳下腺・顎下腺の腫大,頸部リンパ節腫脹は認めるも,膿瘍形成は認めなかった.以上より,何らかのウイルス感染による耳下腺・顎下腺炎と続発性喉頭浮腫と考え,ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウムの経静脈投与を開始した.投与後3日目で呼吸困難の改善,喉頭浮腫の軽快が見られ気管切開等の気道確保処置を要することなく,入院4日後に退院となった.入院時採血検体のEIA法によるムンプスウイルスIgM抗体価測定で抗体指数8.16と陽性であったためムンプスウイルス感染症と診断した.

2016/06/24 13:50〜14:38 P47群

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