第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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Machado-Joseph病(MJD)は脊髄小脳変性症(SCD)の一種であり,遺伝性SCDのなかでは最も頻度が高い.第14番染色体原因遺伝子にCAGリピートの異常伸長があることで確定診断され,近年は脊髄小脳失調症3型(SCA3)と称されるようになった.今回我々は,臥位の簡易検査で閉塞性無呼吸を多数認めたものの,半座位で行った入院ポリソムノグラフィー検査(PSG)では異常を認めなかった1例を経験したので報告する.
【症例】47歳 男性.
【主訴】いびき,睡眠時無呼吸,日中の眠気.
【現病歴】36歳時に複視,41歳時に歩行時のふらつきが出現,次第に転倒するようになった.45歳から構音障害が生じ,46歳で当院神経内科を受診.遺伝子検査にてMJDと確定診断された.47歳でいびき・睡眠時無呼吸を家族に指摘されるようになり,日中の眠気で困ると当科を紹介された.
【既往歴】むずむず脚症候群.
【家族歴】父・姉・父の兄弟4人にSCDあり.
【初診時所見】咽喉頭に明確な狭窄を認めず,声帯運動は正常.JESS 18点 BMI 24.8.
【経過】在宅での簡易終夜検査を普段と同様の臥位で行ったところ,無呼吸低呼吸指数(AHI)21.8と閉塞性無呼吸優位な呼吸障害があり,仰臥位AHI 23.4・側臥位AHI 12.0と体位依存性を認めた.入院PSG検査の際,本人の希望でベッドを70度起こした半座位状態で就寝したところいびきはなく,AHI 4.7,最低酸素飽和度92%と正常であった.その後は,家庭でも半座位での就寝を続け,以後はいびき・日中の眠気が消失している.
【考察】SCDのなかで,多系統萎縮症に関する睡眠呼吸障害の報告は散見するが,MJDについての報告は乏しい.またSASの治療として,半座位での就寝を勧めることは一般的ではない.半座位でSASが改善したとの報告は我々の渉猟した限り,出産直後の産婦例を45度半座位で計測した報告のみであった.今後機会があれば,他の症例でも同様の効果が得られるのか検討したい.

2016/06/24 14:26〜14:44 P46群

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