第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

ガス壊疽は急速に進行し時に死に至る可能性がある軟部組織感染症である.最近経験した3例について考察し報告する.
〈症例1〉61歳,男性.右頸部腫脹と開口障害による食事摂取困難で受診.CTにて右頸部の蜂窩織炎と右傍咽腔の膿瘍形成を認めたがガス産生像はなかった.留置針の穿刺で排濃を認めたので,外筒をドレーンの代わりとして留置して抗生剤投与とした.ドレーンが自然脱落して穿刺部位からの排膿が増量し,前頸部や前胸部にも皮膚の発赤腫脹が拡大したので,広く開放創として洗浄した.皮膚壊死を伴ったので適宜デブリドマンもした.創は皮膚移植で閉創した.経過中,炎症反応と自覚症状の消失および視診上の正常化から抗生剤と洗浄を終了とした数日後に再燃したため再開することになったが,その感染部位は直前とやや異なった部位であった.
〈症例2〉66歳,男性.右頸部腫脹と食事摂取困難で受診.右扁桃周囲膿瘍と診断し,切開排膿と抗生剤投与をした.第7病日に状態悪化がみられ,CTにてガス産生を伴う液貯留と前頸部から胸骨上窩までの膿瘍形成を認めたので創を開放し洗浄した.
〈症例3〉73歳,女性.左顎部腫脹と疼痛で救急外来受診.肝硬変の既往があった.CTにて左顎下部から頸部にかけて膿瘍形成を認めたので留置針で穿刺排膿し,外筒をドレーンの代わりとして留置して抗生剤投与をした.翌日に穿刺部位からガス壊疽特有の悪臭がしたため,創を開放し洗浄した.症例2と症例3の開放創は一次縫合できた.細菌検査ではいずれの症例も非クロストリジウム属が検出された.
〈考察とまとめ〉症例1での創を開放した時期の反省から,他症例では極力早期に広く開放したことにより,皮膚壊死の領域がかなり狭くなり一次縫合で閉創できた.感染部位を広く開放して毎日洗浄を行うことは非常に有用であった.各臨床所見が正常化した場合でも,数日して再発する可能性があることが注意点と考えられた.

2016/06/24 14:26〜15:08 P44群

操作