第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】化膿性胸鎖関節炎は主に整形外科が取り扱う疾患であり,頻度も低いことから耳鼻咽喉科医にはあまり知られていない.胸鎖関節は胸腔や縦隔に近いこともあり,膿瘍形成から縦隔炎,敗血症を引き起こしやすいとされ,生命予後にかかわることもある.今回我々は,化膿性胸鎖関節炎から頸部膿瘍をきたしたと考えられた2例を経験したので報告する.
【症例1】45歳男性.約2ヵ月前から胸部痛,背部痛で近医内科・整形外科で対症療法を行っていた.1週間前より前頸部腫脹が増大し当科紹介受診となった.緊急CT検査にて,胸鎖関節の骨溶解・甲状腺前面から左胸鎖関節周囲にガス像をともなう膿瘍形成を認めた.緊急入院のうえ,頸部膿瘍切開排膿術と整形外科医師により胸鎖関節掻爬術が施行され,術後35日目に退院となった.
【症例2】56歳男性.3週間前から右頸部腫脹あり.発熱・摂食困難が持続するため近医を受診,CTで頸部膿瘍,肺膿瘍,悪性腫瘍による胸骨・鎖骨破壊が疑われ当科紹介となった.当初,悪性腫瘍が疑われていたため,入院後,局所麻酔下に頸部膿瘍切開排膿術・生検術を行ったが,病理所見で腫瘍性変化は認められなかった.その後整形外科コンサルトを行い化膿性胸鎖関節炎からの膿瘍形成の診断となり,入院6日目に全身麻酔下に頸部膿瘍切開排膿術と胸鎖関節掻爬術を行った.術後の経過は良好で術後36日目に退院となった.
【考察】本疾患は,日常の耳鼻咽喉科診療ではほとんど取り扱うことはないと思われるが,症例によっては炎症が頸部にまで広がることもあるため,頸部膿瘍の原因のひとつになることを念頭に置くことが必要であると考えられる.

2016/06/24 14:26〜15:08 P44群

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