第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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降下性壊死性縦隔炎は口腔や咽喉頭の感染が原因となる深頸部膿瘍が頸部間隙を介して縦隔へ至る感染症であり,その経過は非常に重篤であるため早期の診断・治療が必要である.今回,頸部膿瘍から発症した降下性壊死性縦隔炎症例に対して頸部切開・排膿および縦隔ドレナージを要した症例を経験したので報告する.
症例は60歳女性.主訴は咽頭痛,既往歴に糖尿病があり内服治療でコントロールされていた.201X年3月20日頃から咽頭痛を自覚するようになり,3月24日に近医耳鼻咽喉科を受診した.CT検査で頸部にガス産生を伴う膿瘍を認め,さらに縦隔まで進展が疑われたため治療目的に3月25日に当科紹介となった.当科初診時の喉頭所見は,喉頭蓋の舌根側に軽度腫脹を認めていた.CT所見では咽頭,喉頭,頸部食道の周囲にガス産生を伴う膿瘍を認め縦隔まで進展していた.頸部膿瘍(ガス壊疽),降下性壊死性縦隔炎の疑いで同日全麻下に頸部切開・排膿,気管切開術を施行した.頸部は左側の腫脹が著明であったため左側を切開し,左側頸部から咽頭後間隙,右頸部まで広く用手剥離を行った.ドレーンを留置して手術は終了した.以後は抗菌薬投与,創部洗浄を施行したところ血液検査所見では炎症所見は改善傾向であったが,画像所見では縦隔病変に改善がなかったため4月3日呼吸器外科にて右縦隔切開ドレナージを施行,同日に右頸部切開・排膿も施行した.縦隔病変に関しては,切開・排膿後に右胸腔内持続洗浄を施行した.その後も抗菌約投与,創部洗浄を繰り返したところ局所所見,血液検査所見ともに改善を認めたため5月4日に胸部ドレーンを抜去,5月19日より経口摂取を開始となった.
降下性壊死性縦隔炎は,抗菌薬治療が発展した近年でも報告が散見されている.不幸な転帰をたどることもあるため早期の診断,外科的ドレナージ,抗菌薬治療など感染症治療の基本がより重要と考えられた.

2016/06/24 14:26〜15:08 P44群

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