第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】Saccular Cystは,喉頭小囊開口部が閉塞して出来る粘膜下の囊胞性病変であり,本邦における報告数は少なく,まれな疾患であると考えられている.基本的には,喉の違和感や嗄声など軽微な症状のみをきたすことが多いが,大きな囊胞の場合は,気道閉塞による突然死を引き起こすこともある.また,囊胞がさらに大きくなった場合は,甲状舌骨膜を介して喉頭外へと進展することも報告されている.今回我々は,輪状軟甲状間膜を介して喉頭外へと進展した,特殊な進展経路を持つSaccular Cystの1例を経験したので報告する.
【症例】19歳男性.嗄声と咽頭痛を主訴に近医を受診し,喉頭の囊胞性疾患の疑いで当科へ紹介.1歳7ヵ月の時に,当科にて喉頭囊胞の診断で喉頭直達鏡下に摘出術を受けた既往あり.術後5年間は経過観察を受けていたが,再発を認めなかったためにフォローアウトとなっていた.初診時の身体所見では前頸部左側に弾性硬の腫瘤を認めた.経鼻軟性内視鏡では左側の喉頭室を中心として,仮声帯から声門下まで広がる粘膜下の腫瘤を認め,声門は狭小化していた.頸部エコーでは甲状軟骨下縁に囊胞状の病変を認めた.頸部CTにて仮声帯レベルから声門下まで広がり,甲状軟骨と輪状軟骨の間から頸部へと進展する3 cm大の囊胞性の病変を認めた.喉頭内と頸部にまたがる囊胞性疾患の鑑別としては,喉頭内進展した甲状舌管囊胞と喉頭外進展したSaccular Cystが挙がるが,喉頭囊胞の治療歴と種々の検査結果から後者と診断した.囊胞の大きさと進展経路の特殊性から,喉頭を正中で載開し囊胞を摘出した.病理検査では炎症細胞浸潤を伴う多列線毛上皮であり,Saccular Cystとして矛盾しなかった.術後1年経過しているが再発は認めていない.

2016/06/24 13:50〜14:26 P43群

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