第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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神経鞘腫は神経鞘のシュワン細胞から発生する被膜で覆われた孤立性の良性腫瘍で,シュワン細胞を有する脳神経や脊髄神経などから発生するといわれている.耳鼻咽喉科領域では聴神経に多く,その他舌,咽頭,頸部,鼻副鼻腔などに発生することが知られているが,喉頭での発生は比較的稀で,本邦では70例ほどの報告がある.喉頭内での好発部位は披裂部とその周囲の披裂喉頭蓋ヒダなどに最も多く,ついで喉頭蓋に多いとされている.本腫瘍の由来神経の同定は難しいとされているが,上喉頭神経由来が多いとされており,数年単位で増大し,サイズが小さい間は自覚症状がないことも多い.増大とともに咽頭違和感や嗄声,嚥下困難や呼吸困難が出現する.
今回私たちは披裂部に発生した神経鞘腫を経験し直達鏡下に経口的に摘出しえたので,文献的考察をふまえて報告する.症例は37歳女性で,主訴は嗄声であった.喉頭内視鏡検査にて披裂間部から前方へ突出する表面平滑な隆起性病変を認め,当科紹介となった.MRIでは披裂部に境界明瞭なT2強調画像で高信号,T1高信号で等信号を示す約15 mm大の腫瘤を認めた.治療は,全身麻酔下に喉頭微細手術にて経口的に切除した.組織学には紡錘形細胞が束状に増殖し,核の柵状配列を有しており,細胞成分の密なAntoni A領域のほか,細胞成分の乏しいAntoni B領域も混在していた.また,免疫染色ではすべての細胞でS-100が陽性であり,典型的な神経鞘腫の所見であった.術後は声帯麻痺などの合併症もなく順調に経過し,術後約2ヵ月半経過した現在も再発所見は認めていない.

2016/06/24 13:50〜14:26 P43群

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