第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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Paget病は乳頭・乳輪部に発生する乳房Paget病,その他に発生する乳房外Paget病に分けられる.乳房外Paget病は主に高齢者の外陰部・腋窩に発生する皮膚悪性腫瘍で,皮膚癌のなかでもまれな腫瘍である.我々が渉猟しえた限りではこれまでに喉頭に生じた乳房外Paget病の報告はない.今回我々は喉頭に発生した乳房外Paget病の1例を経験したので報告する.
症例は77歳男性.約4ヵ月前から右頸部の腫瘤を自覚.近医受診し,単純CTにて頸部リンパ節腫脹および喉頭腫瘍が疑われたため,精査加療目的に当科紹介受診となった.初診時,喉頭蓋谷右側から右披裂喉頭蓋ひだにかけて腫瘤性病変を認め,右顎下部にも腫瘤を触知した.単純MRIでは右声門上部にT1低信号,T2低信号を示す長径約1 cm大の占拠性病変および右頸部に複数のリンパ節腫大を認めた.FDG-PETでは喉頭病変はSUVmax2.0,腫大リンパ節はSUVmax7.6および8.1の高集積を認めた.喉頭病変からの生検の結果は,重層扁平上皮内および導管内に不整形の核と淡明な細胞質を有する異型細胞の増生が認められ,cytokeratin7陽性でPaget病と考えられる病理所見であった.乳房,腋窩,陰部には明らかな病変は認めなかった.以上より喉頭に生じた乳房外Paget病と診断し,患者の喉頭温存希望や合併症(糖尿病,糖尿病性腎症,複数回の脳梗塞等)などを考慮し,放射線治療を行った.
通常,乳房外Paget病に対する治療は手術が第一選択となることが多く,放射線療法は照射野辺縁からの再発が多いとされている.しかし,最近では放射線治療で良好な成績が得られるという報告も多く,扁平上皮癌よりも感受性がよいともいわれている.本症例も66 Gy照射施行し,喉頭および頸部リンパ節ともに良好な縮小効果が得られ,現在外来経過観察中である.

2016/06/24 13:50〜14:26 P43群

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