第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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甲状腺機能低下症による浮腫は粘液水腫(non pitting edema)といわれ,顔面・四肢などで認めることが多い.今回われわれは,喉頭浮腫を契機に診断に至った甲状腺機能低下症の1例を報告する.
患者は65歳男性.1ヵ月前より眼瞼浮腫を認め,内科で腎障害を指摘され,治療を行っていた.数日前より呼吸困難感が出現したため近医耳鼻咽喉科を受診した.喉頭浮腫の診断で,3日間ステロイドによる内服治療を行ったが,所見が改善しなかったため,当院紹介となった.初診時の喉頭ファイバー所見は披裂部・喉頭蓋中心の浮腫を認めるも声門は確認可能で,経過や局所所見から気管内挿管や気管切開といった気道確保は不要と判断し,原因検索を開始した.感染や炎症所見は認められず,C1-INH陰性,C3・C4の低下も認めず,アレルギーや血管浮腫を引き起こす被疑薬もなかった.しかし単純CT所見で低吸収域を伴った甲状腺のびまん性腫大を認めたため,甲状腺機能を測定したところ,TSH 218 μIU/ml,抗サイログロブリン抗体>4000 IU/ml,抗TPO>600 IU/mlと上昇,fT3 0.1 ng/dl,fT4 0.3 pg/dlと低下を認め,甲状腺機能低下症に伴う喉頭浮腫と診断した.その後内分泌内科へコンサルトし,レボチロキシンナトリウムの内服を開始したところ,徐々に所見の改善を認めた.
喉頭は甲状腺機能低下症によって比較的早期に影響を受ける臓器とされている.報告は数少ないが,気道閉塞をきたし気管内挿管,気管切開を必要とする症例もあり喉頭浮腫の鑑別診断として本疾患を念頭に置く必要がある.治療はホルモン補充療法が第一選択であり,ステロイドは無効である.

2016/06/24 14:20〜15:08 P42群

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