第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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甲状腺癌の肉眼的な大血管進展は他の隣接臓器浸潤に比べ少ないが,その多くは血管壁破壊を伴う壁浸潤であり,血管壁破壊を伴わず血管内を進展する形態は非常に稀である.今回我々は中甲状腺静脈を介し内頸静脈への血管内進展を伴う甲状腺濾胞癌の症例を経験したので病理学的考察を加え報告する.
症例は72歳女性.10年前に甲状腺右葉乳頭癌に対し右葉切除術施行後,外来経過観察中左葉に石灰化を伴う15 mm大の腫瘍性病変を認めた.エコーガイド下穿刺吸引細胞診では明らかな悪性所見を認めなかったが,CT・超音波検査にて同腫瘍の内頸静脈への進展を認めたことから悪性腫瘍を疑い,甲状腺左葉補完全摘術+D1郭清+左内頸静脈合併切除術を施行した.術中所見では左葉から中甲状腺静脈を介し内頸静脈内への進展を伴う腫瘍性病変を認めた.病理組織診断は濾胞癌であり,中甲状腺静脈から結節状に血管内を進展したと考えられた.摘出リンパ節に転移は認めなかった.現在も明らかな再発は認めていない.
甲状腺癌の血管進展形式には病理組織型による違いが報告されており,乳頭癌が血管壁を破壊し浸潤することが多いのに対し,濾胞癌は血管壁破壊を伴わずに血管内を結節状に進展することが多い.過去の報告でも壁破壊を伴わない血管内進展を認めた甲状腺癌症例の多くが濾胞癌であった.よって本症例のように,血管内進展を伴う甲状腺の腫瘍性病変では濾胞癌を強く疑うべきである.また,大血管進展を認める症例では遠

2016/06/24 13:50〜14:20 P41群

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