第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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甲状舌管囊胞は胎生期の甲状舌管が遺残することで生じる先天性疾患である.通常は良性の囊胞性疾患であるが,1~2%の割合で癌の合併が報告されている.今回われわれは甲状舌管遺残組織から発生したと考えられる乳頭癌を経験したので報告する.
症例は36歳の女性.前頸部の腫瘤を主訴に前医を受診した.CTにて舌骨前方の腫瘤を認めたため当院を紹介受診した.エコーにて舌骨に接して13.9×13.7×7.8 mmの腫瘤を認め,内部には充実成分と石灰化を認めた.その他甲状腺を含め,頸部に異常を認めなかった.甲状舌管囊胞と診断し,sistrunk法に準じて摘出術を行った.病理結果は甲状舌管囊胞に発生した甲状腺癌であった.甲状腺に腫瘍がないこと,囊胞内に正常甲状腺組織があることより,異所性甲状腺より発生した乳頭癌と考えた.甲状舌管癌は予後が良好であるため,追加治療は行わず経過観察の方針とした.
甲状舌管癌はまれな疾患であり術前に診断が難しく,自験例のように摘出後の病理組織から診断されていることが多い.しかしエコー,CT,穿刺吸引細胞診などを行うことで診断率を上げることができるため,術前に施行する必要があると考える.

2016/06/24 14:38〜15:14 P40群

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