第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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甲状腺癌の気管浸潤に対して気管全層切除を行い,S状に作成した皮弁と帯状に残存した気管壁を用いて気管皮膚瘻(気管孔)を作成した2症例を報告する.
【症例1】73歳女性.低分化癌の気管浸潤に対し,第1~4気管輪の膜様部を含む気管壁全層を2/3周分切除した.S状の皮弁を用いて気管皮膚瘻を形成し,この際皮弁の下に耳介軟骨移植を行った.術後2ヵ月で気管皮膚瘻を閉鎖した.
【症例2】46歳男性.髄様癌再発による気管浸潤に対し,第2~9気管輪の膜様部を含む気管壁全層を2/3~3/4周分切除し,S状の皮弁を用いて気管皮膚瘻を形成した.術後13日目から同部にTチューブ(+栓)を留置し,呼吸,発声,嚥下が問題なく行える状態である.
【考察】甲状腺癌気管浸潤例において,腫瘍が気管粘膜まで浸潤する場合は気管の全層切除が必要で,環状切除/端々吻合,部分切除/気管皮膚瘻形成,喉頭全摘/永久気管孔形成などが行われる.このうち部分切除/気管皮膚瘻形成は,浸潤が全周性でない場合に広く行われているが,気管の欠損が大きく,特に膜様部が失われる場合は,皮膚が粘膜まで届かずに気管皮膚瘻の形成が困難である.今回我々は,当初から皮膚切開をS状にデザインし,作成された皮弁を気管粘膜と縫合した.同手法により,環状切除/端々吻合の選択や,DP皮弁などの利用を行わずとも容易に気管皮膚瘻を形成でき,手術における手技の簡素化や侵襲の低下に寄与しうると考えられた.

2016/06/24 14:38〜15:14 P40群

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