第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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気管憩室は比較的稀な形態異常であるが,近年では画像検査の発達によりCTで偶発的に指摘されることも増えてきている.基本的には感染を来さなければ治療が必要となることはなく,またその際には保存的加療で軽快する.手術的に加療したり,手術時に問題となった症例の報告は非常に少ない.今回われわれは甲状腺癌の症例においてCTで気管憩室の併存を認め,手術の際に注意が必要となった症例を経験した.
症例は74歳男性,嗄声を主訴に当科を受診し反回神経麻痺を認め,造影CTで右気管傍リンパ節転移,上下内深頸リンパ節転移を疑う所見を認め甲状腺乳頭癌(T4aN1bM0)と診断した.甲状腺右半切除術およびリンパ節郭清術を計画した.右気管傍リンパ節転移の尾側で,第2第3頸椎レベルの気管右背側に気腫性病変を認めた.気管との連続性が疑われ,気管憩室と考えられた.
気管支鏡検査を施行し1ヵ所の瘻孔を認めたが瘻孔径は小さく挿管にあたり問題はないと判断された.気管憩室は転移リンパ節と接しているため,術中に憩室壁の損傷の可能性を考え,そのような際には気管憩室摘出術も行う用意をして手術にのぞんだ.術中,白色のやわらかい壁をもつ囊胞性病変を転移リンパ節尾側に認めた.気管憩室を損傷することなくリンパ節郭清が可能で,術後感染を来すこともなく良好に経過した.
本邦での気管憩室症例の報告は少ない.過去の報告例の特徴も含めて文献的に考察する.

2016/06/24 14:38〜15:14 P40群

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