第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】Desmoplastic fibroblastoma(Collagenous fibroma,線維形成性線維芽腫)は比較的稀な良性の線維性軟部腫瘍である.四肢に好発し,頭頸部に発生することは少ない.今回われわれは甲状腺腫瘍との鑑別を要した頸部Desmoplastic fibroblastomaの1例を経験したので報告する.
【症例】60歳,女性.
【主訴】左頸部腫脹.
【現病歴】X年3月,左頸部の腫脹に気がつきX年6月に前医を受診,CT検査にて甲状腺左葉の裏面に75×62×50 mm大の気管を右側へ圧排する,左総頸動脈との境界が不明瞭な腫瘤を認められた.甲状腺原発の悪性腫瘍を疑われ,針生検および開放生検を施行されるも診断がつかず,さらなる精査および加療を求めX年7月に当科紹介となった.
【初診時所見】左頸部は腫脹し,硬い可動性不良の腫瘤を触れた.腫脹部分の皮膚には生検後の傷跡がみられた.反回神経麻痺は認めなかった.
【経過】確定診断を得るため,X年8月,全身麻酔下に開放生検を施行した.腫瘍は弾性硬で前頸筋と癒着していた.腫瘍の断面は白色調で,断面からの出血はごくわずかだった.腫瘍の一部を採取し手術を終えた.生検組織の病理所見は,異型に乏しい紡錘形腫瘍細胞が多量の膠原線維中に疎に増殖し,免疫組織学的には腫瘍細胞はAE1/AE3(-),TTF-1(-),vimentin(+)であり,β-cateninの核内発現は認められず,甲状腺悪性腫瘍は否定的であり,またデスモイド腫瘍としては定型的ではなく,Desmoplastic fibroblastomaが最も考えられた.X年10月,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は被膜に覆われており,周囲組織と癒着していたが総頸動脈と気管とは剥離可能だった.腫瘍を被膜に沿って剥離し摘出した.手術摘出物の染色体検査にてt(2;11)(q31;q12)の染色体異常が認められ,Desmoplastic fibroblastomaの確定診断を得た.以後現在まで再発なく外来経過観察中である.

2016/06/24 14:38〜15:14 P40群

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