第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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非常にまれな甲状腺神経鞘腫の1例を経験したので報告する.
症例は73歳男性.呼吸器内科通院中に撮影されたCTで偶然に甲状腺腫瘤を認め紹介された.触診で甲状腺左葉に平滑な硬い腫瘤を触れたが,反回神経麻痺は認めなかった.造影CTでは甲状腺左葉,気管に接するように径13 mm大の造影効果のない腫瘤を認めた.MRIでは周囲実質と比較してT1強調等信号,淡いT2強調高信号を示していた.PET-CTでは腫瘤に一致して軽度のFDG集積(SUVmax 2.90)を認めた.穿刺吸引細胞診ではclass III, Mesenchymal cell clustersとの診断であった.術前には鑑別診断が十分につかなかったものの,患者自身の希望もあり手術治療を選択した.腫瘤は甲状腺内側の気管傍で,反回神経が喉頭に進入する部位に存在していた.気管,甲状腺ともに癒着はみられず,甲状腺左葉とともに摘出された.術後反回神経麻痺は一過性であり,他に神経脱落症状を認めなかった.組織学的には,紡錘形核を有する紡錘形細胞が錯綜する束を形成して増殖し,全周性に線維性被膜で覆われており,免疫染色でS100+++, Neurofilament-であり,cellular schwanomaと診断された.
神経鞘腫は画像や細胞診では診断が困難な場合があり,本症例でも摘出後の組織診で初めて診断された.頸部は頭蓋外神経鞘腫の好発部位であり,副咽頭間隙や頸動脈鞘周囲に多く発生することが知られているが,本症例のように甲状腺周囲に原発するものは非常に稀である.

2016/06/24 13:50〜14:38 P39群

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