第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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異所性甲状腺とは,胎生期に甲状舌管内の原基下行異常により,通常とは異なる位置に甲状腺組織が存在するものである.正所甲状腺を含めた形成異常や機能異常を伴い,小児期より甲状腺機能低下症を呈して治療を要する症例も多く認める.異所性甲状腺の治療は,ホルモン剤投与による保存的治療や手術摘出が報告されているが,手術後の残存甲状腺機能が不十分となり術後甲状腺機能低下症を呈することが多く認められ,手術適応については慎重に検討されるべきである.今回我々は,異所性甲状腺を摘出後にも正所性甲状腺が通常の機能を維持した症例を経験したので報告する.
症例は68歳女性.初診4ヵ月前に前頸部腫脹を自覚し当科を受診した.各種画像検査と穿刺吸引細胞診を施行し異所性甲状腺を疑ったが,ご本人希望により特に投薬なく定期的なEchoでの経過観察を行った.ヨード・テクネシウムシンチグラムでは正所性甲状腺にのみ集積を認め,異所性甲状腺には認めなかった.初診後8年7ヵ月間経過観察を行い,特に性状・サイズに変化を認めなかったが,ご本人より手術希望となり,Sistrunk法を用いた異所性甲状腺の摘出手術を行った.周術期経過は良好で,術後の甲状腺ホルモン値の低下も認めなかった.摘出検体よりEctopic thyroidの診断を得た.

2016/06/24 13:50〜14:38 P39群

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