第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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縦隔腫瘍には,胸腺腫(40%),囊胞(15%),神経原生腫瘍(13%)などの良性腫瘍,胚細胞性腫瘍,胸腺癌,悪性リンパ腫(5~10%)などの悪性腫瘍があるが,縦隔内へ進展する巨大甲状腺腫瘍は縦隔腫瘍の中でまれな疾患であるとされている.今回我々は,右腕頭静脈下に伸展し,肺動脈にまで達した巨大甲状腺腫瘍を摘出した1手術例経験したので報告する.
症例:63歳,女性.
主訴:特になし(他院からの紹介受診).
既往:子宮筋腫(20年前手術).
現病歴:他院施行の胸部レントゲン検査において,気管の左方偏移があり,縦隔腫瘍の可能性を指摘され当院呼吸器外科を受診した.CTで80 mm大の内部不均一な腫瘤性病変が認められ甲状腺右葉原発の縦隔内巨大甲状腺腫瘍と考えられ,精査目的で当科紹介となった.血液検査では,腫瘍マーカー(AFP,CEA,NSE,シフラ,HCG)は正常値であった.また,IL-2,甲状腺機能(TSH,Free-T3,Free-T4)も正常値であった.エコーガイド下生検にて明らかな異形細胞を認めなかった.手術は甲状腺右葉切除術を定型通り行う予定であったが,縦隔内へ伸展した腫瘍の剥離が困難であったため,呼吸器外科に依頼し胸骨正中切開を加えて手術を施行した.その結果,腫瘍は完全に摘出することができ,大きさは60×60 mm大,重さは200 gであった.腫瘍は右腕頭静脈下に伸展し,肺動脈にまで達していたが,周囲血管への圧迫はなく周辺臓器との剥離も比較的容易であった.また右反回神経の走行に異常を認めなかった.術後経過は良好で,反回神経麻痺も認めず,術後8日目に退院している.確定診断は腺腫様甲状腺腫であった.
本症例から縦隔内へ進展する巨大甲状腺腫瘍を摘出する際の問題点,手術法などを過去の文献から考察し報告する.

2016/06/24 13:50〜14:38 P39群

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