第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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突然発症した前頸部の皮下血腫により発見され,保存的加療後に待機的手術で摘出した副甲状腺腺腫の1例を経験したので,文献的な考察を含め報告する.
症例は62歳女性.201X年6月,数日前から嚥下障害,呼吸苦を生じ,受診前日より前頸部皮下血腫が出現したため,近医より当院へ紹介受診された.初診時,オトガイ部から前頸部および鎖骨下にかけての皮下血腫と上咽頭から咽喉頭の粘膜下血腫および喉頭浮腫を認めた.緊急CTでは甲状腺周囲,前頸部に血腫と考えられる軟部陰影を認めたが,明らかな出血源と出血原因が不明であったため気管切開は行わず,救急医療科に依頼し経鼻ファイバー下に挿管を施行した.緊急入院後は併診で管理を行った.出血源は検索後も不明であったが血腫の改善がないため気管切開術を予定した.しかし,術前検査にて出血時間の延長を認めたため中止とし,凝固系異常の検索を優先させたが明らかな異常所見はなかった.第6病日救急医療科で行った気管支鏡検査で咽喉頭血腫病変と喉頭浮腫の改善傾向を認めたため第8病日抜管した.抜管後も症状の悪化を認めず,第11病日耳鼻咽喉科に転科となった.再評価のCTでは甲状腺左葉下極に腫瘍性病変を認めたが周囲の血腫は吸収され改善傾向であった.糖尿病内分泌内科へ精査を依頼したところ,甲状腺エコーで左葉に境界不明瞭で内部不均一な多房性のmassを認め,MIBIシンチグラフィーでも一部RI集積を認めた.血液検査にてiPTHとCa高値を認めたため副甲状腺腺腫が疑われた.第22病日に退院としたが,外来フォロー中も高Ca血症が持続したため手術加療を勧めた.受傷後約4ヵ月後に再入院し甲状腺左葉切除術を実施した.病理学的診断は副甲状腺腺腫であった.術後一過性のCa低下を認めたためCa製剤の内服を開始したが,退院後2ヵ月経過した現在ではCa値の改善を認めており,術後経過は良好である.

2016/06/24 14:44〜15:02 P38群

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