第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】副甲状腺癌は原発性副甲状腺機能亢進症の原因としては1%程度と稀な疾患である.副甲状腺腺腫に比較すると血清Ca値,intact PTH値が高値を示すことが多く,臨床的に術前から疑い診断がつくことも多い.今回著明な高Ca血症,intact PTH高値をきっかけに副甲状腺癌を疑って拡大切除を行った症例を経験したため報告する.
【症例】特に既往のない23歳男性.頭痛・嘔気を主訴に近医を受診し,補正Caが15.6 mg/dLであったため当院紹介受診となった.初診時補正Ca 15.6 mg/dL,intact PTH 2374 pg/mL,PTHrP<1.1 pmol/L,尿FeCa 7.3%であり,原発性副甲状腺機能亢進症と診断された.緊急入院を勧めたが仕事の都合で不可能であったためシナカルセト12.5 mgを開始し,飲水を励行して通院加療となった.初診より7日後は補正Ca 21.9 mg/dLであり,軽度の意識障害を認めたため副甲状腺クリーゼの診断で緊急入院となった.99mTcMIBIシンチグラフィとCTより右上副甲状腺が責任病巣と考えられた.Ca値,intact PTHが著明に高値であることから臨床的に副甲状腺癌と診断した.そのため,手術は2・右3~4番リンパ節(甲状腺癌取扱い規約)と甲状腺右葉の一塊切除を基本術式とし,術前エコーにて腫大を認めていた右4番リンパ節の迅速病理結果を見て頸部郭清を追加するか決める方針で臨んだ.手術所見では,右上副甲状腺周囲に癒着を認め,石様硬の2.5×2.0 cmの腫瘤を認めた.迅速病理に提出した右4番リンパ節には転移を認めなかったため,頸部郭清の追加はしなかった.永久病理では副甲状腺癌の診断であり,リンパ節転移を認めなかった.術後数ヵ月は補正Caが低値であり代償性と考えられるintact PTHの高値が続いたが,Ca値が適正に補正された後にはintact PTHも正常化した.癌の診断を得たのち転移の検索目的でFDG-PET/CTを施行したが,明らかな転移を認めず,術後半年たつ現在までintact PTHの再上昇を認めていない.

2016/06/24 14:44〜15:02 P38群

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