第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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麻痺を生じた迷走神経内異所性副甲状腺腺腫の症例を経験したため報告する.
症例は,58歳女性.頭痛,嘔気,嘔吐を主訴に救急外来を受診,頭蓋内を含め全身には明らかな異常は認めなかったが未治療の高血圧(208/113 mmHg)が存在したため,降圧加療目的に内科入院となった.降圧加療開始2日後より嗄声,咽頭違和感,左頸部痛が生じ,頸部エコーにて左総頸動脈と左内頸静脈の間に腫瘤を認めたため当科を紹介受診となった.左声帯麻痺を認め,穿刺吸引細胞診では褐色の液体を吸引し,class2囊胞性病変の疑いとの診断であった.また,内科入院時の検査では,intact-PTHは62 pg/mlであった.CT,MRIでは頭頸部領域に他の腫瘍性病変は認めなかった.以上から,迷走神経鞘腫や原発不明癌の頸部リンパ節転移を疑い,診断治療目的に手術を施行した.術中所見では,腫瘍は頸動脈鞘内に存在し,腫瘍の上下端は迷走神経と連続していた.迷走神経鞘腫を疑い被膜下摘出を試みるも癒着は高度で被膜剥離は困難であったため,神経を切断し腫瘍を一塊に摘出した.病理所見では主細胞や好酸性細胞が索状や蜂巣状に配列,intact-PTHの産生を認め,副甲状腺組織と考えられた.また約40%で,ヘモジデリンの沈着を伴う繊維性肉芽組織を認め,梗塞像が疑われた.さらに,神経束にも浮腫やヘモジデリンの沈着を認めており,梗塞の影響は神経束にまで及んでいた.これらの病理所見より,神経鞘内で腫瘍が梗塞を生じ,神経麻痺を来した可能性が示唆された.
迷走神経内異所性副甲状腺の症例報告は渉猟し得た限り数例の報告がみられるが,いずれも副甲状腺機能亢進症を契機に発見されており,当症例のように神経症状を呈した報告は認めなかった.

2016/06/24 14:44〜15:02 P38群

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