第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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HIV(human immunodeficiency virus)感染症は現在においても完全な治癒を見込めない感染症である.世界全体の新規HIV感染者数は減少傾向にあるが,我が国におけるHIV感染者数はいまだ増加傾向であり,早期診断が重要である.HIV感染者にみられる口腔粘膜病変は初発症状として現れる頻度が高いとされ,HIV感染の診断の契機となりやすく,耳鼻咽喉科医の担う役割も大きいと考えられる.今回,HIV感染症によると考えられる難治性口腔咽頭潰瘍の症例を経験したので報告する.
症例は41歳男性.口蓋扁桃摘出術の既往あり.約1ヵ月前から咽頭痛が出現し,近医耳鼻咽喉科を受診するも血液検査,頸部CT,上部消化管内視鏡検査で異常を指摘されず,鎮痛薬にて経過をみられたが疼痛改善しないため当院受診した.両側扁桃床および両側舌根部に潰瘍性病変を認め,血液検査では軽度の炎症反応亢進を認めた.潰瘍性病変から培養検査,病理検査提出するも特記すべき所見なく,単純ヘルペスウイルス,EBウイルス,サイトメガロウイルスはいずれも既感染を示す結果であり,梅毒,T-SPOTは陰性であった.ベーチェット病を疑い当院膠原病内科に紹介となり,HLA-B51は陰性であったが除外診断より不全型ベーチェット病の診断となった.プレドニゾロンおよびコルヒチンによる治療が開始され,咽頭潰瘍の改善を認めたがその後通院自己中断となっていた.約2ヵ月後に労作時呼吸困難を主訴に当院呼吸器内科を受診し入院となった.CTで両側肺野にすりガラス状陰影を認め,気管支肺胞洗浄液のPCR検査でニューモシスチス肺炎の診断に至った.背景にHIV感染症が疑われ,抗HIV抗体スクリーニング検査陽性であったことから当院感染症科に転科となった.Western blot法での確認検査でも陽性であり,HIV感染症の診断に至った.口腔咽頭に複数の潰瘍再燃を認めたが,抗HIV療法導入1週間後には改善を認め,HIV感染症による口腔咽頭潰瘍であったと考えられた.

2016/06/24 13:50〜14:44 P37群

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