第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】家族性地中海熱(familia mediterranean fever:FMF)は,周期性発熱と漿膜炎を主徴とする,常染色体劣性遺伝の自己炎症疾患であり,MEFV遺伝子の異常によって起こるとされているが,症状が典型的でない不完全型も日本では比較的多く認められる.また,一般的に両側口蓋扁桃摘出術後に舌扁桃が代償性に肥大し,舌扁桃炎を繰り返す症例をしばしば経験する.今回,われわれは両側口蓋扁桃摘出術後の舌扁桃炎と鑑別を要した不完全型FMFの症例を経験したので,文献的考察を踏まえ報告する.
【症例】53歳男性,主訴は発熱と咽頭痛.30年前に慢性扁桃炎で両側口蓋扁桃摘出術の既往あり.2年前より倦怠感を自覚し,数ヵ月おきに39°C台の発熱と咽頭痛,関節痛を認めることから精査加療目的に当院当科を紹介された.発熱時は舌扁桃の肥大・白苔付着を認め,血液検査でCRPの上昇を認めるもののWBCは正常で,1週間程で自然解熱し咽頭痛も消失した.当初は口蓋扁桃摘出術後の舌扁桃炎と考えたが,その後の発作で咽頭痛に先行して発熱が認められたことから,当院膠原病内科へコンサルトしたところ,MEFV遺伝子の多型が認められ,不完全型FMFと診断された.
【考察】典型的FMFは発熱期間が3日以内と比較的短く,腹膜炎や胸膜炎などの漿膜炎を合併し,MEFV遺伝子exon10に変異を認める.一方,不完全型FMFは発熱期間が長く,漿膜炎症状を欠き,関節痛や咽頭痛など非特異的症状を伴う場合や,exon10以外の遺伝子変異を認める場合が多い.診断的治療としてコルヒチン投与が行われ,本症例でもコルヒチン投与により症状が改善したことから,経過と合わせ不完全型FMFと診断された.
【結語】周期的な発熱・咽頭痛を繰り返す症例のなかには,不完全型FMFが含まれている可能性を考え,鑑別することが必要と考えられた.

2016/06/24 13:50〜14:44 P37群

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