第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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Riga-Fede病は先天性歯や早期に萌出した下顎の1番の歯(下顎乳中切歯)の刺激によって,舌下部にさまざまな褥瘡性潰瘍,創傷を生じる乳幼児特有の疾患である.乳幼児では潰瘍のため授乳量の減少や摂食困難を示すことがある.今回Riga-Fede病を経験したので報告する.
【症例】0歳男児.出生時,母体痙攣により救急搬送,吸引分娩にて娩出された.出生週数は42週0日,出生時体重2890 g,身長50 cm,明らかな外表奇形は認めなかった.家族歴に特記事項なし.出生6日頃より舌の裏側に白斑を認め,徐々に増大傾向であった.11日目に皮膚科を受診しカンジダの検査で異常なかったためステロイド軟膏を処方されたが,白斑は増大し,哺乳時啼泣,哺乳量低下もみられた.14日目に腫瘍性病変の否定,精査加療目的で当科へ紹介受診となった.
【現症】両側下顎乳中切歯が萌出しており,一致して舌下部に潰瘍,肉芽が形成されていた.哺乳力の低下を認めた.
【経過】歯科で二度萌出歯の先端を削り,研磨を施行した.その後白苔,肉芽は縮小し,哺乳の改善を認めた.
【考察】下顎乳中切歯は通常8~9ヵ月頃,乳歯のなかで最も早く萌出する.出生児にすでに萌出していたり,通常より早い時期に歯が萌出する場合がある.これを先天性歯といい,先天性歯は過剰歯,または真性の乳歯などである.Riga-Fede病では先天性歯により舌潰瘍を形成する.先天性歯が過剰歯の場合は過剰歯の抜去を行い,早期に萌出した下顎乳中切歯が原因である場合は,中切歯の辺縁の鋭利な部分を削除,研磨,歯科用セメントなどによる被覆をすることにより改善がみられる.症状が著しく授乳困難,摂食障害を来す際には原因歯を抜歯する場合もある.本疾患の病態は単純であるが,本疾患の概念がないと過剰な治療や検査を新生児に行うこともあり耳鼻咽喉科医として知っておくべき疾患と考えられた.

2016/06/24 13:50〜14:44 P37群

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