第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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タイトル

(はじめに)従来,顔面や頸部の皮膚に瘻孔を形成する歯性感染症の病態としては,未治療のまま長期間放置された齲歯周囲の感染が原因となり生じる外歯瘻が代表的なものであった.近年,類似した臨床像を呈する症候として,種々の目的でビスフォスフォネート製剤を投与されている患者が抜歯などの侵襲的歯科治療を受けた後に生じる顎骨壊死(Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw: BRONJ)による顔面瘻孔が注目されている.我々は2011年4月から2015年12月の期間に,顔面瘻孔を生じた歯性感染症を8例経験した.耳鼻咽喉科の日常臨床の現場で遭遇する事は比較的稀であるが,顔面・頸部腫脹の鑑別診断として重要と考えられる,歯科疾患が原因で頭頸部に瘻孔・肉芽を認める本疾患の臨床経過につき,文献的考察を加えて報告する.
(症例)8例中,歯性歯周炎が原因であったものが3例(全て男性,43~58歳,平均52歳)で,病変部位は,右下顎骨体部,左耳前部,頤下部がそれぞれ1例であった.一方BRONJが原因で瘻孔を生じた症例は5例(全て女性,67~85歳,平均75歳)で,病変部位は頤下が3例で鼻翼と下顎角部がそれぞれ1例であった.いずれもCTの特徴的所見が診断に有用であった.全症例とも保存的治療単独では根治に至らず,抜歯や腐骨除去といった外科的治療を要した.
(考察とまとめ)顔面や頸部に腫脹性病変を認めた際,外歯瘻やBRONJといった歯性感染症による瘻孔を鑑別診断として念頭におく必要がある.また,診断・治療に際しては歯科と連携して診療にあたる姿勢が重要と再認識させられた.

2016/06/24 13:50〜14:44 P37群

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