第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】ガイドワイヤーによる耳管経由の鼓膜損傷を起こした症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】71歳男性.第1病日,総胆管結石,急性胆管炎の診断で内科入院中に上部消化管内視鏡にてERCPを施行,ENBDチューブを胆管に留置した.ENBDチューブを経口から経鼻へ誘導するために0.89 mm(0.035 inch)ガイドワイヤーを経鼻にて挿入したところ,ガイドワイヤーが右耳から露出したため,再施行しENBDチューブを経鼻留置とした.頭部CTで明らかな異状は認められず,第2病日,当科初診となった.右耳内所見では右ツチ骨短突起近傍に小さな鼓膜裂傷を認め,また,咽頭の右耳管開口部は萎縮が目立ち大きく開いていた.純音聴力検査では右18.8 dB,左30 dBの軽度感音難聴であり,患側の右には加齢相当のごく軽度な聴力低下を認めるのみだった.第8病日にははっきりした鼓膜裂傷はなくなっていた.
【考察】外径0.5 mmのファイバースコープを用いて耳管の観察を行ったところ16%で鼓室から咽頭まで観察できたと報告されている.使用されたファイバースコープは今回のガイドワイヤーよりやや細いが,一般的に上部消化管内視鏡で使用されるガイドワイヤーにはさらに細い0.64 mm(0.025 inch)のものもあり,ガイドワイヤーが比較的容易に耳管を通過しうる症例は少なくないと考えられる.ENBDチューブなどを経鼻へ誘導する際のガイドとしては,より太い樹脂製チューブなどを用いるか,透視下で行うのが望ましいと考えられた.

2016/06/24 14:26〜14:56 P36群

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