第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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今回,急性副鼻腔炎から血栓性静脈炎,髄膜炎を呈し,多彩な中枢神経症状をきたした1例を経験したので報告する.
症例は45歳,男性.3週間前よりの頭痛,黄色鼻汁に加え,複視症状が出現したため,20xx/6/2に近医受診.髄膜炎を疑われ入院となり抗菌薬治療開始された.その際,画像精査にて右一側性副鼻腔炎の指摘あり.急性副鼻腔炎に伴う鼻性頭蓋内合併症が疑われ,6/3当院へ転院となった.来院時,軽度見当識障害,失算および左眼球の外転障害認めた.右鼻腔はポリープで充満し膿性鼻汁を認めた.CTでは右一側性の汎副鼻腔炎の所見を認めたが,頭蓋底骨欠損は認めなかった.まず保存的治療として入院後より抗生剤,ステロイド投与開始.経過中の造影MRIにて,新たに髄膜炎・左S状静脈洞血栓症を認めた.鼻性頭蓋内合併症の診断で,右副鼻腔炎手術を行った.鼻内の状態は良好であったが,フォローMRIにて左側頭葉に脳膿瘍の新たな出現・S状静脈洞血栓症の増悪を認めた.脳神経外科にて穿頭ドレナージ術施行し,術後より抗凝固療法を開始した.その後は神経症状増悪なく経過し,現在まで膿瘍の再増悪・血栓症の増悪は認めていない.
鼻性頭蓋内合併症は致死率の高い疾患であるが,今回の症例では右急性副鼻腔炎から左半球を中心に頭蓋内合併症をきたした.急性副鼻腔炎による鼻性頭蓋内合併症の波及ルートは前頭洞が最も多いとされている.本症例では右蝶形洞炎から副鼻腔骨壁の穿通静脈を介して炎症が海綿静脈洞におよび,S状静脈洞まで達し,左半球静脈血栓,脳膿瘍をきたしたと考えられた.この要因として本症例では右の蝶形洞が正中を越えて左側まで発達しており,炎症が対側まで波及したと推測された.

2016/06/24 14:26〜14:56 P36群

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