第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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ゴアテックスは1975年にアメリカにおいて人工血管が医療分野に適用されて以来,生体適合性,抗血栓性,強靱性を持つ素材として広く使用されてきた.今回,われわれは上顎洞へのゴアテックスの留置が感染の原因となり,眼球突出および複視をきたした症例を経験したので報告する.
症例は38歳男性.X-18年頃に,左の眼窩底骨折に対し,近医形成外科で手術が行われた.X-3年くらいから左の眼球突出があり,X年に近医眼科受診するも,眼球そのものに異常はなく,以前眼窩底骨折の手術を受けた病院を紹介され受診.CTにて左の上顎洞炎があり,上顎洞内に石灰化陰影を認め,真菌症が疑われるとのことで,X年7月当院紹介受診となった.初診時所見としては,左の中鼻道にポリープがあり,黄色の鼻汁を認めた.CTでは左上顎洞内に高吸収の異物様所見を認めた.また,左眼球突出があり,眼球運動障害,視力低下はないものの,正面視以外では複視を認めた.左上顎洞炎の診断で,X年11月に当科入院となった.全身麻酔下に左鼻内視鏡手術を施行.中鼻道を開放し,上顎洞自然口を開放したところ,洞内からゴアテックスと思われるものが自然口を塞ぐような形で出現した.ゴアテックスの表面は汚染されており,摘出が必要と考えたが鼻内からだけでは難しいと判断し,犬歯窩切開を追加し,内視鏡と併用でゴアテックスを除去した.上顎洞自然口を開大し,下鼻道に対孔を開けて,手術を終了した.術後は鼻洗浄を頻回に行った.退院後の経過は良好で,眼球突出は軽減し,複視も改善した.

2016/06/24 14:26〜14:56 P36群

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