第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】ダビガトランは従来の心原性脳梗塞の治療薬であるワルファリンカリウムと比較して薬物相互作用の影響が少なく,プロトロンビン時間を指標としたモニタリングが不要であるという利点を持ち,2011年の発売以降使用されている.しかし,副作用の食道潰瘍が指摘され,2014年に服用方法について添付文章が改定された.今回われわれはダビガトランによる下咽頭潰瘍を経験したので報告する.
【症例】74歳,男性.脳梗塞と心房細動のため20XX-3年よりダビガトランを内服していた.20XX年8月,内服直後より咽頭のつかえ感を認め,翌日に咽頭痛と嚥下困難感を認めた.服用方法は特に問題がなかった.近医で上部消化管内視鏡を施行され,食道に異常はなく,梨状陥凹の浮腫と白色の膜様物の付着を認めた.翌日に当科を受診し,軽度の炎症反応を認めたが,膿瘍形成は認めなかった.入院のうえ,ダビガトランを休薬して他剤へ変更し,ステロイドと抗生剤による治療を行った.浮腫は著明に改善し,入院4日目に退院した.
【考察】ダビガトランによる咽頭潰瘍は過去に報告されておらず,また他の薬剤による咽頭潰瘍の報告も散見するのみであった.薬剤性食道潰瘍,咽頭潰瘍の報告との比較を中心に,本症例の病態につき考察を行った.薬剤性食道潰瘍の原因として,薬剤の剤形,酸度,浸透圧,イオン濃度,薬理作用などが挙げられる.ダビガトランは剤形が大きく,カプセル内の酒石酸が酸性成分を多く含むため,停留した際に酸による粘膜の直接傷害を引き起こす可能性がある.本症例は内服直後に症状が出現し,また内視鏡所見で,ダビガトランによる食道潰瘍で特徴的と言われる白色の膜様物が認められたことにより,薬剤性咽頭潰瘍であると診断した.
【まとめ】ダビガトランによる下咽頭潰瘍の1例を経験した.咽頭潰瘍の原因として,薬剤性も鑑別に挙げる必要がある.

2016/06/24 13:50〜14:26 P35群

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