第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【背景】当院では進行上顎癌に対し,主に超選択的動注化学療法と放射線治療を併用した治療を行っている.上顎癌に対する放射線治療後の晩期障害である下垂体機能低下症は頻度の高い合併症であるが,自覚症状に乏しいことが多く,入院治療を要する重症なものは少ない.今回,入院治療を要したGrade 3の放射線治療後汎下垂体機能低下症を経験したので報告する.
【症例】63歳男性.X-3年8月に右上顎癌cT4bN0M0に対し超選択的動注化学療法と放射線治療60 Gyを施行.その後再発なく,外来通院されていた.X年6月より吃逆を自覚.徐々に胃部不快感を自覚され,7月下旬に食事摂取困難となり,当院に救急搬送となった.当初,消化器症状が強く,重度の電解質異常を認めたため,上部消化管疾患を想定し,上部消化管内視鏡を施行したが,特記所見を認めなかった.電解質補正を行ったが,低ナトリウム血症の持続,全身倦怠感の増悪を認めたため,内分泌内科にコンサルトした.MRIで下垂体の菲薄化を認め,コルチゾール,ACTH,甲状腺ホルモンの低値を認め,下垂体機能低下症が疑われた.rapid ACTH負荷試験,三者負荷試験,GHRP-2負荷試験が施行され,放射線治療の晩期障害による汎下垂体機能低下症と診断された.ヒドロコルチゾン内服治療が開始され,電解質異常,全身倦怠感,消化器症状は改善し同年8月下旬に退院となった.
【考察】放射線治療後下垂体機能低下症は,過去の報告では上咽頭癌で20~30%,鼻副鼻腔癌で62%に起こるとされている.低下するホルモンはゴナドトロピン,甲状腺刺激ホルモン,副腎皮質ホルモンの頻度が多く,ゴナドトロピン欠乏は重症化しやすいとされている.頭頸部癌は中年以上の男性に多い傾向があるため,下垂体機能低下を来しても,自覚症状が乏しい可能性が考えられ,放射線治療後の定期的な内分泌機能のフォローアップは重要と考えられた.

2016/06/24 13:50〜14:26 P35群

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