第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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口腔・咽頭癌の診断や治療の際,病変部を不染帯として描出させることを目的としてヨード散布が行われることがあり,当科では全身麻酔下で施行している.ヨードは強い刺激性のために散布後に胸痛や胸がしみる等の症状を訴えることがあるが,重篤な副作用は稀である.今回我々は,ヨード散布後に著明な咽頭浮腫を来し窒息に至った症例を経験したので報告する.
症例は77歳男性.当科受診3年前に下咽頭癌および食道癌に対し,他院外科でそれぞれ内視鏡的粘膜切除術,食道亜全摘術および胃管再建術を施行された.術後経過観察中に下咽頭後壁の白色病変を指摘され,精査目的で当科へ紹介となった.直達喉頭鏡下に中下咽頭から喉頭にかけてヨード散布し病変を確認したところ,白色病変周囲にヨード不染帯を認め,生検にて扁平上皮癌と診断した.1ヵ月後に経口的下咽頭腫瘍切除術を施行した.その際,切除範囲決定のためヨード散布を行った.術中に軽度の咽頭浮腫を認めたため,手術操作が原因と考えステロイドを投与した.病理検査で尾側断端陽性であったため,さらに3ヵ月後に残存病変確認目的で再度ヨード散布を行ったところ,不染帯を認め生検を施行した.手術より2時間後に呼吸苦および喘鳴が出現した.視診上,上中咽頭に著明な粘膜浮腫を認め,下咽頭と喉頭の観察は困難であった.数分後には窒息に至り意識消失したため,輪状甲状間膜切開を施行し気道を確保した.その後撮影したCTで上咽頭から下咽頭にかけ全体に粘膜浮腫を認め,ステロイドを投与し翌日に浮腫の改善を得た.
ヨード散布後に喉頭浮腫を来した例は渉猟し得た限りでは1例のみ報告されており,本症例もヨードのアレルギー反応や血管透過性の亢進による咽頭浮腫と考えられた.ヨード散布を行う際には,術後に散布部位の洗浄を生理食塩水で行った後中和剤を散布し,ヨードの刺激を軽減させるとともに厳重な気道管理を行う必要があると考えられた.

2016/06/24 13:50〜14:26 P35群

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