第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

石灰沈着性頸長筋腱炎は,咽頭痛,後頸部痛,頸部可動制限を主症状とする疾患で,同症状を呈する咽後膿瘍,髄膜炎,化膿性脊椎炎などとの鑑別が問題になる.咽頭後軟部組織の腫脹が認められ,咽後膿瘍に酷似するが,第1~2頸椎レベルの椎前部に認める石灰化が特徴的である.咽後膿瘍や髄膜炎は重篤な合併症を引き起こす疾患であるのに対し,本疾患は対症療法により1~2週間で治癒するとされている.しかし,本疾患の報告は散見されるものの,周知されているとは言い難い現状である.今回我々は,咽後膿瘍,髄膜炎との鑑別が必要となった石灰沈着性頸長筋腱炎を2例経験したので,文献的考察を加えて報告する.
症例1は45歳女性.前日からの頸部痛,頸部可動制限を主訴に当院救急外来を受診し,当科を紹介された.視診上,咽喉頭に明らかな異常は認められなかった.また,髄膜炎は髄液検査で否定された.しかし,CTでは咽頭後軟部組織の腫脹を認め,第1~2頸椎椎前部に石灰化を認めたため石灰沈着性頸長筋腱炎と判断したが,咽後膿瘍の可能性を否定しきれず抗生剤投与を開始した.治療開始2日後には症状の軽快が認められた.
症例2は79歳男性.4日前からの頭痛,発熱,3日前からの頸部痛,頸部可動制限を主訴にかかりつけの当院循環器内科を受診した.髄液検査で髄膜炎は否定されたが,精査を目的に入院となった.入院後のCT検査,MRI検査より咽後膿瘍を疑われ,入院3日目に当科に紹介となった.咽喉頭に明らかな異常はなかったが,CT検査で第1~2頸椎椎前部に粗大な石灰化が見られ石灰沈着性頸長筋腱炎と判断した.本疾患を充分認識し,正確な診断を行うことで,過度な検査や治療が避けられるものと考えられた.

2016/06/24 14:14〜14:38 P34群

操作