第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【症例】1歳11ヵ月,男児.
【主訴】咽頭外傷.
【既往歴】川崎病.
【現病歴】来院当日の11時に歯ブラシをくわえたまま60 cm高のベッド上から転落.口腔内出血を認め救急要請.12時に近医受診.歯ブラシ頭部が咽頭後壁へ迷入していることが確認されたため16時に当院紹介となる.
【初診時所見】口腔内所見:咽頭後壁より伸びる歯ブラシの柄が観察された.全身所見:ややぐったりとした全身状態,SpO2;95%以上,頸部腫脹・頸部狭窄音・嗄声・握雪感なし,明らかな神経学的異常所見なし.CT所見:咽頭後壁に迷入した歯ブラシ頭部と,咽頭周囲から頸動脈周囲,上縦隔に至る気腫を認めた.採血結果:WBC;17000/μl,CRP;0.04 mg/dL.
【臨床経過】18時から緊急異物摘出術を施行.内視鏡も併用し破折した歯ブラシを確認.鉗子で把持し慎重に摘出した.周囲の腫脹は軽度で膿汁流出なし.生理食塩水で洗浄し異物の残存が無いことを確認し終了した.術後は気管内挿管を行ったままICU管理とした.39°Cの高熱が続いており,術後1日目には左頸部腫脹と皮下気腫が出現し咽頭喉頭浮腫の増大を認めたため,膿瘍形成や敗血症の可能性も考慮し抗生剤投与はFOMX;0.2 gよりABPC/SBT;0.75 gへ変更した.術後2日目の造影CTでは膿瘍形成も認めず気腫は著明に減少しており,咽頭喉頭浮腫も改善したため抜管した.術後3日目にはICUを退室し術後12日目に退院となった.
【考察】歯ブラシ外傷は1,2歳児に多く,歯磨き中に歩くなどして転倒することにより受傷することが多い.口腔咽頭外傷の注意すべき合併症としては,頭蓋内損傷,内頸動脈等の血管損傷,刺入部感染症がある.歯垢洗浄後の歯ブラシには多量の口腔内細菌が付着しているため,他の口腔咽頭外傷と比較し歯ブラシ外傷では有意に膿瘍形成を伴うリスクが高まるとの報告もあり注意が必要である.

2016/06/24 13:50〜14:14 P33群

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