第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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茎状突起過長症は延長した茎状突起により咽頭異物感,肩こり,嚥下痛,耳痛,下顎突出時や嚥下時の顎関節や耳へ放散する痛み,首を回転する時の痛み,耳鳴など多岐にわたる症状を呈する疾患である.過長茎状突起自体の物理的な刺激による症状と舌咽神経や頸部交感神経などの刺激による症状がある.今回,舌骨に達する過長茎状突起の骨折により嚥下時痛などが出現し,頸部外切開による手術加療を施行し症状が軽快した1例を経験したので,文献的な考察を加えて報告する.
症例は45歳女性.感冒による咳嗽時に左頸部で大きな音とともに痛みを感じ,その後は嚥下時痛と嚥下時に音が響く症状と発熱があり当科へ紹介受診となった.初診時所見は咽頭所見に異常なく,左顎下部下顎骨近傍に握雪音を認めた.頸部CTにて舌骨に達する左過長茎状突起を認めた.上方と下方で二ヵ所の骨折を認めたが,上方の骨折は変形癒合しており過去の骨折と考えられた.下方の骨折部が握雪音の部位と一致した.保存的治療にて経過をみたが,嚥下痛と耳への放散痛,嚥下時に音が耳,頭に響く症状は軽快せず発症より約3ヵ月後に手術を行った.手術は頸部外切開にて行い,顎二腹筋背側の茎状舌骨靭帯を切断し茎状突起より付着筋(茎状咽頭筋,茎状舌筋)を外した.骨折部は内部に結合織が入り込んでおり,これを切断しながら骨折部より尾側を摘出した.術後速やかに骨折部で感じていた痛みと違和感は消失したが,嚥下時違和感と軽度の嚥下困難感が出現した.嚥下困難感は茎状咽頭筋,茎状舌筋切断による症状と考えられた.嚥下内視鏡にて明らかな嚥下障害や誤嚥は見られず,経過観察したところ緩やかに改善し術後10ヵ月後には軽快した.
過長茎状突起の骨折は本邦において報告例の少ない稀な症例である.今回,咳嗽により過長茎状突起を骨折し,頸部外切開による手術で症状を軽快出来た症例を経験したので報告する.

2016/06/24 13:50〜14:14 P33群

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