第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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「嚥下」は,延髄の嚥下中枢によって支配される反射運動である,と記載されているが,実際の臨床の場で経験する「嚥下障害」は,延髄の問題よりも,呼吸,循環といった全身の障害や,体幹や姿勢の保持の障害などが先行して発症する場合が圧倒的に多い.そのため,「嚥下障害」の認識は,それ自体が病気ではなく,全身状態の不調が要因となった二次的な病態としての認識が必要であり,治療においては,嚥下の主戦場である口腔,咽喉頭,頸部の局所的要因と,大本にある全身的要因の両側面からのアプローチが重要である.これまで局所的要因に対して,舌や舌骨・喉頭の運動性の改善などを目的としたリハビリテーション法が報告されており,一定の効果を認めるものの,不十分なケースが多いのも現状である.その背景には,全身的要因への準備が不十分なために,局所的要因に対する対応での効果がでにくいことが考えられる.嚥下時に重要な舌骨・喉頭の挙上に関連する舌骨上/下筋群は,進化の過程で横隔膜へ分化した舌骨下筋群の作用が吸気の補助であることから呼吸と密接に関連し,体幹の支持,歩行の乱れは,胸郭運動の抑制から呼吸の浅化をきたし,舌骨下筋群の緊張性を亢進させるため,全身的要因では,姿勢,呼吸,循環の乱れが重要となる.現在,嚥下障害のリハビリテーションには,局所的要因に対してだけではなく,呼吸リハビリテーション,理学療法が徐々に重要視されてきたが,「どの程度の」姿勢や呼吸の乱れが嚥下障害の要因となりうるかの詳細な記載は少ない.実際に嚥下障害患者の背景には,様々な病態が合わさっているため,一概に一つの項目につき「どの程度」を規定するのは困難であるが,今回,我々は嚥下造影検査を実施できた症例を元に,全身状態(姿勢,呼吸,栄養状態を中心に)と嚥下造影検査所見(喉頭の挙上度とタイミング,食道入口部の開大,誤嚥の有無等)とを比較し検討したので報告する.

2016/06/24 14:14〜14:50 P32群

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