第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

当科では中咽頭癌・下咽頭癌・喉頭癌の表在癌を中心に2009年より弯曲型喉頭鏡下に内視鏡的咽喉頭手術(ELPS)を実施している.ELPSは低侵襲な手術で大多数の症例は術後の嚥下に大きな変化は生じないが,一部の症例で嚥下障害に悩まされることがある.当科で経験したELPS術後の嚥下障害に関して検討した.
2010年1月から2015年10月までに当院でELPSを施行した症例183例中,術後1ヵ月時点で嚥下障害を認めた症例は7例,3ヵ月を経過しても経口摂取が不可能な高度な嚥下障害が残存した症例は3例であった.その内訳は中咽頭癌が2例,下咽頭癌が1例であった.
狭窄が高率に生じ嚥下障害を来すといわれている食道入口部の半周以上の切除を必要とする病変は当科ではELPSの適応外としている.当科で行った下咽頭病変について,梨状陥凹病変では切除部位が瘢痕狭窄して咽頭腔が狭小化することが散見されたが,高度な嚥下障害に至ったのは放射線照射歴があり披裂喉頭蓋ヒダまで切除範囲が及んだ1例のみで,披裂喉頭蓋ヒダから披裂部が瘢痕収縮して高まりがなくなり喉頭流入していた.輪状後部および後壁病変は照射野内の切除でも高度な嚥下障害が持続する症例はなかった.中咽頭病変については放射線照射野内の術野で中咽頭前壁の横方向への広範囲切除を行った症例,中咽頭後壁の横方向広範囲切除を行った症例で高度な嚥下障害となった.中咽頭前壁の広範囲切除症例でも放射線照射歴がない症例では術後の嚥下障害は生じなかった.
過去の集学的治療を受けた症例は喉頭挙上不良や知覚低下などから咽頭残留がすでに認められていることが多く,嚥下障害が遷延した症例ではさらに広範囲切除による瘢痕狭窄・器質化・形態変化が加わって嚥下が不可能となったものと考えた.当科の経験からは,放射線照射後で,かつ横方向・水平平面内の切除範囲が広くなる症例については治療後の嚥下障害の危険性が高いことが予測される.

2016/06/24 14:14〜14:50 P32群

操作