第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】今回我々は,嚥下障害・めまいと難聴で発症した水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)感染と考えられる1例を経験した.
【症例】患者は60歳男性.10年前に耳性めまいの既往あり.X年8月27日,38度の発熱と咽頭痛が出現.近医受診で内服治療.30日,嚥下障害,嗄声が出現.9月2日,右難聴,めまいが出現.翌3日,当科初診.両耳内および耳介の異常所見なし.鼻腔・口腔に異常所見なし.顔面麻痺なし.内視鏡下,咽喉頭粘膜に異常なく,右声帯麻痺と梨状窩への唾液の貯留を認めた.眼振検査では左注視眼振と左方向固定性の非注視眼振を認めた.聴力検査では両側低音障害型難聴を認めた.脳単純MRIおよび頸部・胸部造影CTでは異常を認めなかった.9月4日,めまい・難聴は改善.5日,夕方と深夜に吃逆があるも改善.7日,原因不明の嚥下障害と声帯麻痺に対してVZV感染を疑い検査.11日,原因究明と治療のため獨協医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科へ紹介受診.右声帯麻痺はあるも披裂軟骨の運動は改善し頭皮の感覚異常もあるため,ウイルス性声帯麻痺と診断.当科のVZV(CF)検査値は128と高値.11月27日,声帯麻痺および嚥下障害が改善.
【考察】Ramsay Hunt症候群の三主徴である第7・8脳神経障害および帯状疱疹がすべて揃うのは症例の60%ほどで,各症状の出現に2週間前後の差がみられることがある.また,他の多発脳神経障害をきたす症例が約10%報告されており,第4・5・10・11脳神経麻痺例が多いといわれている.Ramsay Hunt症候群で帯状疱疹を欠く例はzoster sine herpeteと呼ばれ,Bell麻痺と誤診されることが20%ある.このようにVZV感染症には非典型例が多いため初診時の注意深い観察が必要である.
【まとめ】嚥下障害と難聴で発症したVZV感染と考えられる1例を経験した.初診時,過去の既往や先入観にとらわれず,あらゆる疾患の可能性を考慮に入れた診察が必要である.

2016/06/24 14:14〜14:50 P32群

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