第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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喉頭癌の放射線治療後に,下咽頭に嚥下困難を伴うIgG4関連潰瘍を認めた1例を経験したので報告する.
症例は71歳男性.嗄声を主訴にX年7月当科受診し,声帯に隆起性病変を認めた.生検の結果高分化型扁平上皮癌であり,治療前評価として全身PET/CT検査を行った.胸部,腹部および左鼠径リンパ節など多発性にFDG集積を認め,左鼠径リンパ節生検の結果,IgG4関連疾患を合併していることが判明した.その他の病変は精査の結果転移所見はなく,喉頭癌(T1bN0M0 Stage1)の診断で,10月から11月まで放射線治療(63 Gy)を行いCRとなった.放射線治療終了後,外来経過観察を行い,再発兆候はなく経過良好だった.X+1年4月中旬より,呼吸苦が出現し徐々に強くなり,貧血,顆粒球減少を伴ったため,7月上旬呼吸器内科に精査入院となった.同時期にPET/CT検査を行い,喉頭左背側にFDG集積を認めた.貧血の原因として,消化管出血など明らかな出血部位は認められなかった.8月上旬から中旬にかけて,嚥下困難のため経口摂取不能となった.8月下旬全身麻酔下に,PET/CTでFDG集積を認める喉頭左背側の生検を行った.左輪状後部を中心に白色調の硬い粘膜を伴う潰瘍性病変を認めた.生検の結果IgG4関連疾患だった.生検直後よりメチルプレドニゾロン投与を開始すると,次第に血清IgG4が減少し,貧血,顆粒球減少が回復した.嚥下困難も改善し経口摂取可能となった.
喉頭・下咽頭腫瘍の生検で診断に難渋する症例のなかには,IgG4関連病変である場合もあり,頻度は高くないが,本疾患を疑って診療する必要があると思われた.

2016/06/24 13:50〜14:14 P31群

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