【背景】Modified Killian’s method(MK法)は軟性喉頭鏡検査のテクニックの一つであり,Killian頭位からさらに前屈し,頭部回旋,バルサルバ法を併用することで,下咽頭腔を拡大する.梨状陥凹瘻の診断は造影CTや下咽頭食道造影で行われ,根本的治療は瘻管全摘出術とされているが,炎症性瘢痕や切開排膿の既往により,手術は容易ではない.近年,Kimらがトリクロール酢酸(TCA)による梨状陥凹瘻の内瘻孔閉鎖術を報告した.しかし,内瘻孔の確認は術中の直達喉頭鏡下で行われることが多い.今回,MK法併用の軟性喉頭鏡検査で術前に内瘻孔を同定することができ,診断・加療に役立ったため報告する.
【症例】14歳女児.発熱・左前頸部腫張を認めた.急性甲状腺炎として加療され,造影CT,下咽頭食道造影の結果から左梨状陥凹瘻と診断された.外切開による瘻管摘出術を行ったが,反復炎症による周囲の炎症性肉芽のため瘻管の摘出は困難であった.その後も前頸部腫脹を反復するため,トリクロール酢酸を用いての化学焼灼術施行予定となった.術前のMK法併用の軟性喉頭鏡検査で左梨状陥凹に内瘻孔を同定することができ,術中所見でも同部位に内瘻孔を認め,TCAによる化学焼灼術を施行した.術後はMK法を用いることで創部の経過観察も行うことができた.術後1年3ヵ月経過したが再発所見は認めていない.
2016/06/24 13:50〜14:14 P31群