第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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目的:耳鼻咽喉科における日常診療では様々な異物の症例を経験する.しかし多忙な日々で症例を振り返る機会がないのが現状である.そこで,当科を異物にて受診した71例の部位別検討,および特異症例を提示し報告する.
方法:対象は2014年1月から2015年10月までの71例.鼻腔,咽頭,下咽頭・喉頭,食道に部位別検討した.さらに異物の有無,年齢分布,部位の詳細,種類,経過等を検討した.
結果:鼻腔異物は20例中80%の16例に認めた.全て5歳以下で,右鼻腔が68.8%と多く,種類は様々で,15例で摘出しえた.咽頭異物は部位別最多の39例で,87.2%の34例が魚骨で,年齢分布に特徴はない.異物は39例中46.2%の18例で認め,舌根,右扁桃,左扁桃に偏りはなかった.ファイバー摘出群が鉗子摘出群を上回った.下咽頭・喉頭異物は年齢分布,種類に偏りは認めなかった.食道異物では全8例中75%の6例が70歳以上で,入口部と下部に差はなく,裁縫針,義歯,PTP包装紙等を認めた.
症例:症例は50歳男性,近医より下咽頭の扁平鍵状のカレイ魚骨の摘出目的に当科紹介.診察時は魚骨を認めず,CT,GIFも異常はなかった.誤嚥後3日目に右下腹部痛が間欠的に持続し再診.CTにて回腸に魚骨影,腹腔内Free Air,採血で高炎症所見を認め,小腸穿孔と判明.同日緊急Opeにて魚骨を摘出しえた.その後合併症なく,術後12日目に退院となった.異物誤嚥で下部消化管穿孔を来す症例の初期に関与する経験をした.
考察:鼻腔異物が右に多いのは,右手に利き手が多く,幼児の手に届く範囲の種々のものを挿入する傾向にあることが推測される.咽頭異物では魚骨の頻度の高さと,実際には異物を認めない症例の多さが顕著となった.摘出群で若干ファイバー群が多いのは,開業医からの紹介例が多いことによる偏りと推測する.食道異物においては摘出に苦慮する異物が多いのも,認知機能の低下した高齢者の誤嚥が多いためと推測した.

2016/06/24 14:20〜14:50 P30群

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