第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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術中超音波検査法(以下術中エコー)は腹腔鏡下の腹部手術や脊髄および脊椎病変に対する手術,脳実質病変に対する手術など多岐にわたって用いられており,その有用性について各領域から多くの報告がある.頭頸部手術においても,重要血管に近接する小病変の位置を特定したり,多発腫瘤摘出時の残存病変の有無を確認したり,副咽頭間隙など慎重にアプローチすべき部位へ的確に導いたりと,術前診断のみならず術中エコーを行うことが,様々な病変に対して有効であることが報告されている.今回我々は,舌内に刺入し長期間摘出されていなかった魚骨異物を,術中エコーを施行することで容易に摘出することができた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
症例は83歳男性.当科紹介となる3週間前に黒鯛を食べた後,咽頭痛が出現した.翌日近医耳鼻咽喉科を受診するも喉頭ファイバーなどで異物が確認されず,抗生剤投与にて経過観察されていた.疼痛は軽減したが違和感が継続するため近医総合病院耳鼻咽喉科を受診し,同様の検査を受けるもやはり異物は確認できなかった.その後疼痛が再燃したため同院にてCTを施行され,舌内に埋没した異物を指摘されたため,摘出目的に当科紹介となった.全身麻酔下に手術を開始,術中エコーにて異物を同定し,最小限の切開で破損することなく完全摘出することができた.
術中エコーの利点としては,患者の移動なく無侵襲に何度も施行できる点,摘出後の残存有無確認を容易に行える点などがあげられる.本症例のように魚骨異物を摘出する場合,今回使用した形状がリニア型のプローベを用いることが重要と思われる.我々の検討では20 mm程度の深さまでは明瞭に魚骨を描出することが可能であった.舌などの可動性の大きい組織内への迷入物はエコーを用いて探すことをまず考慮すべきと思われた.

2016/06/24 14:20〜14:50 P30群

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