第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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耳鼻咽喉科医にとって異物症例は日常的に遭遇する疾患だが長期間無症状で経過した症例は稀である.今回,中長期間体内に残留した異物の3例を経験したため報告する.
症例1は68歳男性で,1年前から前頸部腫瘤を自覚していたが増大傾向であったため当科を紹介受診した.前頸部皮下に約1 cmの硬い腫瘤を触知しCT,MRIにてアーチファクトを伴う病変を認めた.局所麻酔下に腫瘤を摘出すると,内部に金属片を認めた.詳しく病歴を聴取したところ,電気カミソリの破損に気づいていたが出血などの受傷症状がなく忘れていたとのことだった.
症例2は60歳男性で,10年前から頭痛を自覚していた.人間ドッグで毎年頭部CTを撮影していたが異常を指摘されず,鼻閉の増悪と嗅覚低下のため紹介受診した.両側鼻茸を認めCTを撮影したところ左前頭洞内に異物を認めた.全身麻酔下にKillian法にて左眉毛部切開すると左前頭洞骨折を認め約2 cmの石を摘出した.病歴を聴取すると20年前に高速で回転する砥石の破片による右前額部受傷があり,受傷時の皮膚縫合部が右前額部でありその時の砥石とは思わなかったとのことだった.
症例3は1歳男児で,竹製の箸で左頬部を受傷し当院に救急搬送されたが,頬部の裂傷のみでレントゲン上,異物を認めず口腔内からも異物を触知せず外来経過観察となった.その後2週間微熱が持続し,左頬部腫脹と排膿が出現したため入院しCT上,軟部組織よりも低信号な異物の陰影を認め,受傷17日後に手術し約4.5 cmの竹製の箸を摘出した.
症例1,2は無機物質の異物であり感染を生じにくく,患者が異物の侵入を自覚していなかったことが診断を困難とし,摘出まで1年,20年と長期残存した.症例3は箸異物の診断にCTでのLDA所見が有用であった.箸などの木片は空気を多く含むため軟部組織よりも低信号を示すが,異物侵入後の時間経過とともに周囲の水分を吸収し,CT値が上昇する傾向があり診断に注意が必要となる.

2016/06/24 14:20〜14:50 P30群

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