第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】小児の外耳道異物は外来で摘出されることが多いが,外来処置では摘出が困難な症例もある.今回,我々は全身麻酔下に異物を摘出し,異物の確定のために成分分析を行った症例を経験したので報告する.
【症例提示】症例は3歳男児.3歳児健診にて異常を指摘され近医耳鼻咽喉科を受診.右外耳道内が腫脹し深部に異物の存在が疑われたが,摘出困難であったため当科紹介となった.当科初診時所見では,外耳道の腫脹と異物が確認され,耳漏も伴っていた.本人は時期が不明だがBB弾を耳に入れたと話しており,家族の話によると生分解されるバイオBB弾の可能性が考えられた.全身麻酔下に異物摘出術を施行したところ,異物はプラスチック様であったが非常にもろく把持すると砕けてしまう状態であった.外耳道の腫脹が高度であったこともあり摘出には難渋した.鼓膜には穿孔が形成されており,異物の細片が鼓室内にも認められが可及的に摘出を行った.異物の鼓室内残存の可能性と耳漏を認めたことを考慮して,鼓膜穿孔の閉鎖は行わずに手術を終了した.耳漏細菌培養検査ではMRSAが検出されたが,局所処置などにより耳漏は改善した.異物を摘出してから約1年後に右鼓膜形成術を施行したが,鼓室内には異物の残存は確認できなかった.摘出した異物を特定するために,異物の一部を成分分析に提出した.赤外分光分析の結果は,当初に疑われていたバイオBB弾とは異なる成分であり,ポリブタジエンゴムが疑われるとのことであった.ポリブタジエンゴムは通常タイヤやゴルフボールなどに用いられる素材であり,異物の種類は不明のままである.
【まとめ】今回の症例は,高度の外耳道腫脹を来しており,また異物が容易に砕けてしまう性状であったため,全身麻酔下にて異物を安全に摘出することが可能であった.また,本症例では異物の成分分析を行ったが,残念ながら異物の内容を特定することはできなかった.

2016/06/24 14:20〜14:50 P30群

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