第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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今回我々は内視鏡下経副鼻腔手術のみで眼窩内木片異物を除去しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
症例は65歳,男性.竹により右眼球を受傷しその場で自己抜去,同日眼科を受診し大きな異常なしとされた.しかし,受傷2ヵ月後より複視や視野障害の症状が出現したため脳神経外科を受診した.MRIで眼球後部の筋円錐内に腫瘤陰影を認めたが,木片異物は同定されず良性腫瘍が疑われたため経過観察となった.しかし,症状が増悪するために診断加療目的に当院紹介となった.腫瘤は下直筋と内直筋間より筋円錐外に至るように増大しており,一部は紙様板に接していた.当院でも木片異物による肉芽腫を疑わず,生検目的に内視鏡下経副鼻腔的手術を開始した.腫瘤の迅速診断では炎症性肉芽腫の診断であったが,追加で組織採取をした際に竹片が偶然摘出された.このため竹串による炎症性肉芽腫と確定診断し,以後ステロイドやトラニラスト投与など行い腫瘤の縮小と症状改善を認めている.
眼窩内木片異物は画像検査で写りにくく創部が小さいなどの理由で発見が困難であることがしばしばある.眼窩内異物が放置されると肉芽や膿瘍を形成することもある.さらに重篤化すると眼球運動や視機能に合併症を引き起こしうるので,可及的早期の診断が望まれる.また,木片異物が眼窩内に残留した際の摘出法は,これまで前方,外側,または経頭蓋からのアプローチが一般的であった.本症例より,紙様板に接する眼窩内異物に関しては,内視鏡下経副鼻腔手術による摘出法が有用である可能性が示唆された.

2016/06/24 14:20〜14:50 P30群

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