第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】リンパ上皮癌は頭頸部領域では上咽頭に多く,下咽頭に発生することは極めて稀である.今回我々は下咽頭に発生したリンパ上皮癌の1例を経験したので文献的な考察を加えて報告する.
【症例】79歳男性.数ヵ月前から右頸部腫脹を自覚し,徐々に増大傾向を認めたため,近医耳鼻咽喉科を受診したところ,下咽頭に腫瘍性病変を指摘され当科紹介となった.初診時,下咽頭後壁右側から梨状陥凹外側に表面整な腫瘍性病変を認め,右上内深頸領域および右下内深頸領域にリンパ節腫脹を認めた.外来時の下咽頭病変からの生検では明らかな腫瘍細胞を認めなかったが,右頸部リンパ節からの穿刺吸引細胞診では癌細胞の転移が疑われたため,全身麻酔下に直達鏡下下咽頭生検,右頸部リンパ節郭清(I~V)を施行した.術中迅速病理検査では下咽頭腫瘍の診断に至らなかったものの,永久病理検査でリンパ上皮癌と診断された.術後,放射線化学療法(docetaxel 20 mg/m2 biweekly併用,66 Gy/33Fr)を施行した.治療開始直後より腫瘍は著明に縮小し,最終的にCRとなった.現在治療後約2年4ヵ月であるが,腫瘍の再発,転移は認めず経過良好である.
【手術時永久病理所見】高度のリンパ球浸潤,集簇を伴う低分化な上皮性腫瘍細胞の増生を認め,リンパ上皮癌として矛盾しない像であった.EBER in situは陰性であった.
【まとめ】リンパ上皮癌はリンパ行性転移,血行性転移の頻度が高いことが知られているが放射線感受性は高く,機能温存を重視した治療が可能であると考えられた.

2016/06/24 14:26〜15:02 P28群

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