第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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[はじめに]下咽頭癌原発巣非制御例の終末期は,経口摂取が不可能となり,気管切開を施行しても誤嚥を完全に防止することはできないため,安静なものにはなりにくい.緩和的放射線療法の効果も限定的であるため,根治を目指せなくとも,原発巣の摘出により,良好な結果を得られることがある.自験2手術例を呈示し,症状緩和を目的にした手術の重要性について考察した.
[症例1]77歳男性.2ヵ月前からの咽頭痛と頸部腫瘤を主訴に受診した.左梨状陥凹に深い潰瘍を伴う腫瘍を認め,同側頸部に多発リンパ節転移を認めた.また,肺に多発転移を認めたためT4aN2bM1と診断した.受診時には経口摂取が不可能な状況であり,経口摂取が最後の望みであったため,下咽頭・喉頭全摘出,両頸部郭清,遊離空腸による下咽頭再建術を行った.手術後7ヵ月で肺転移の増悪により死亡したが,その1週間前までは経口摂取ができていた.
[症例2]79歳男性.6ヵ月前からの咽頭痛を主訴に受診した.輪状後部を中心に腫瘍を認めた.頸部腫脹はなく,T3N0M0と診断した.10年前の脳梗塞の原因の頸動脈硬化に対して両側総頸動脈にステントが挿入されていたため両側頸部郭清術は省略し,再建術を大胸筋皮弁で行うために原発巣切除を喉頭全摘・下咽頭部分切除術にとどめた.術後7ヵ月経過し,経口摂取に問題なく,無病生存している.
[考察]下咽頭癌患者の診療においては原発巣の制御がQOLを維持するために重要であり,手術の安全性が確保されれば,症状緩和を目的にした原発巣の摘出をも検討すべきであると考えた.

2016/06/24 14:26〜15:02 P28群

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