第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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(はじめに)内視鏡技術の進歩とともに下咽頭癌は早期癌で発見されるようになった.下咽頭癌の内視鏡診断では食道癌に準じた肉眼所見が用いられているが,解剖学的相違から肉眼所見がそのまま浸潤度診断と一致するとは言えない.一方,頭頸部癌原発巣に対する超音波診断は軟骨に囲われ,内部は空気であることから描出しにくい部位として認識されていたため,その有用性は言及されていない.今回我々は内視鏡で下咽頭梨状陥凹に表在隆起性腫瘍を認め,超音波診断が深達度診断の参考となった症例を経験したため,頭頸部癌に対する超音波診断の有用性について考察する.
(症例)症例は66歳男性.中部食道癌治療後の消化管内視鏡の際に左梨状陥凹に腫瘤性病変を認め,当科紹介となった.耳鼻咽喉科内視鏡では下咽頭左梨状陥凹に表在隆起性病変を認めた.頸部リンパ節・遠隔転移は認めなかった.頸部CT,MRIでは腫瘍は下咽頭左梨状陥凹の甲状軟骨内側板に接する腫瘤像を認めた.上喉頭動脈の分枝から流入する血管を認めていた.エコーでは腫瘤は甲状舌骨間膜から観察され,多角形をした11 mmの低エコー域として描出された.厚みは6 mmであり,甲状軟骨内側板につづく高輝度の層の断絶は認めなかった.軟骨膜は保たれていると診断し,経口的ロボット支援手術を施行した.腫瘍を甲状軟骨膜内側で切除した.断端として甲状軟骨膜,咽頭収縮筋を採取したが浸潤は認めなかった.病理所見は粘膜下層への浸潤を認めたが軟骨浸潤は認めなかった.
(考察)頭頸部癌に対する超音波診断の有用性の報告は散見するのみである.軟骨に囲われているため,描出不良ととらえられているが甲状舌骨間膜や甲状軟骨の後側方から観察することにより良好な描出が可能である.頸部から観察すると腫瘍の深部浸潤評価できるため,深達度診断の一助になることが示唆された.

2016/06/24 14:26〜15:02 P28群

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