第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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小細胞癌は,通常肺に原発する悪性腫瘍で,肺がん全体の約10%を占める.肺以外の部位にも稀ではあるが発生し,その頻度は小細胞癌全体の6%と報告されている.いずれの部位に発生しても,非常に進行性で早期に遠隔転移を生じるため極めて予後不良の疾患である.頭頸部領域においては,喉頭原発の報告が最も多く下咽頭原発の報告は極めて稀である.当科で経験した下咽頭原発小細胞癌2症例についてその治療経過を報告する.
症例1は,75歳の男性.主訴は咽頭違和感.現病歴として,3ヵ月前より嚥下時の違和感が出現したため近医受診し下咽頭腫瘍を指摘された.精査の結果,下咽頭小細胞癌T2N2cM1(椎体多発転移)と診断された.CBDCA+ETP療法を4クール施行しPRが得られた.その後病状の進行を認め治療開始より8ヵ月で原病死した.
症例2は,73歳の男性.主訴は,嚥下困難.現病歴として,1.5ヵ月前から嚥下時の違和感が進行するため近医を受診し下咽頭腫瘍を指摘された.精査の結果,下咽頭小細胞癌T3N2bM0と診断された.経口摂取不能のためまず局所治療として,咽喉食摘術および遊離空腸再建術を施行した.明らかな遠隔転移巣は認めなかったが,術後全身治療としてCBDCA+ETP療法を4クール施行し,その後さらにPCI(25 Gy)および頸部照射(60 Gy)を施行した.CRで経過していたが,治療開始1年2ヵ月後に肺転移を認めた.治療開始より2年5ヵ月経過した現在担癌生存中である.
下咽頭原発小細胞癌について文献検索を行ったところ9例の詳細な報告を渉猟しえた.治療開始後1年以上の経過観察が可能であったのは,本報告を含めて6例ありうち5例で化学療法が施行されていた.長期にわたる腫瘍制御のためには化学療法は必須であるが,予後の改善には更なる治療開発が必要である.

2016/06/24 14:26〜15:02 P28群

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