第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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背景:小唾液腺に由来する導管癌の発生は非常にまれである.今回われわれは,軟口蓋腫瘍摘出後に,病理組織より多形腺腫由来導管癌の診断となった1例を経験したので報告する.
症例:56歳男性,胸苦を主訴に総合病院内科を受診した.軟口蓋の腫脹を指摘され,治療目的に同院耳鼻咽喉科を経て当科紹介となった.初診時には軟口蓋から口蓋垂にかけて粘膜下に存在する4 cm大の腫瘤を認めた.MRIではT1強調像で低信号,T2強調像で一部高信号の不整形な囊胞性成分が認められ,小唾液腺由来の多形腺腫が疑われていた.当科入院のうえ,軟口蓋および口蓋垂粘膜を切開し腫瘍摘出を行った.腫瘍は径3 cmの表面平滑な球形で,割面は黄白色充実性の腫瘤であり,肉眼的には多形腺腫として矛盾しない所見であった.摘出後は残存した粘膜を吸収糸で縫合し,口蓋垂の形成を行った.その後,口蓋垂が舌根部に接触することによる違和感を訴えたため,術後7日目に局所麻酔下に口蓋垂の下方の一部を追加切除した.その後は違和感も消失し,術後12日目に経過良好にて退院となった.摘出標本の病理組織所見により,多形腺腫由来導管癌との診断となったため,追加切除も含めて今後の治療について検討中である.
考察:導管癌の発生率は全唾液腺癌のなかでも1~3%と言われている.さらにそのほとんどは耳下腺に発生するものであり,小唾液腺由来の導管癌は非常にまれなものである.導管癌は非常に悪性度の高い腫瘍として知られており,治療としては十分な安全域を確保して切除することが重要と考えられるが,局所再発率,遠隔転移発生率ともに高率であり,予後不良な組織型の一つである.小唾液腺から発生する頻度は非常に低いものであるが,本症例のようなケースも存在することを念頭に置き,術前の評価および患者へのインフォームドコンセントを行うことが重要であると考えられた.

2016/06/24 13:50〜14:26 P27群

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