第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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乳児期の咽頭の囊胞性疾患は稀な疾患である.舌根囊胞は咽頭部の狭窄や喉頭蓋の圧迫により重篤な呼吸障害を引き起こす可能性があり早期診断・治療が必要である.喉頭軟弱症は声門上部構造が嵌頓して呼吸障害をきたし,乳幼児の喘鳴の原因として多い疾患である.長期的な呼吸管理を要する難治例もあるが,自然軽快することも多い疾患である.今回,我々は喉頭軟弱症と診断し外来経過観察中に,急激な呼吸障害をきたし舌根囊胞の診断を得た症例を経験したので報告する.
症例は2ヵ月,女児.在胎37週3日に自宅分娩で出生後,当院へ救急搬送となりNICUへ入院となった.2日間でNICUを退院となり,以後,体重増加不良にて経過フォローされていた.生後1ヵ月の再診時に陥没呼吸を指摘され当科へ紹介となった.喉頭蓋の引き込みはないが,吸気時に披裂部が喉頭内に引き込まれる所見を認め,喉頭軟弱症披裂部型と診断された.しかし,チアノーゼや無呼吸等の重篤な呼吸障害はなく厳重な経過観察の方針となった.以後,喘鳴は改善傾向であった.2ヵ月時に予防接種(Hibワクチン)を接種後より哺乳量が減少し尿量も減少したため,接種3日後に当院救急外来を受診した.呼吸障害も強く入院となり,挿管人工呼吸器管理となった.再度,当科へ精査依頼となり,喉頭ファイバー所見にて舌根に腫瘤性病変を認め,MRI所見と併せ舌根囊胞の診断に至った.当科再診後11日目に舌根囊胞壁切除術を施行,術後4日目に抜管した.軽度の喘鳴と陥没呼吸は認めるが呼吸状態は安定していた.経口摂取も良好で体重増加も認められたため,術後12日目で退院となった.以後,外来フォローとなるが,体重増加,運動発達も良好であり,生後6ヵ月頃より陥没呼吸も改善し11ヵ月の受診時には軟弱症所見も消失していた.現在も外来フォロー中であるが囊胞の再発は認めていない.

2016/06/23 18:06〜18:42 P26群

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