第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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副咽頭間隙は茎突前区と茎突後区に分かれ,茎突前区は耳下腺腫瘍,後区は神経原性腫瘍が多いとされる.今回我々は,茎突後区に発生したangiomatoid fibrous histiocytomaの1例を経験したので報告する.
症例は35歳男性で左顔面から左上肢,下肢のしびれを主訴に前医内科受診し,脊椎MRIで副咽頭間隙に腫瘤性病変を認めたため精査加療目的にて当科紹介となった.CTでは左副咽頭間隙に4.5 cm大の腫瘤性病変を認め,MRIでは同部位にT1で筋肉と等信号,T2で隔壁を伴う高信号病変で,まだらに造影される腫瘍を認めた.穿刺吸引細胞診ではクラス3で,核小体を有する細胞で,由来や良悪性の鑑別が困難との結果であった.神経原性腫瘍(交感神経鞘腫)を第一に疑い,リンパ節や唾液腺腫瘍の可能性も念頭に手術を施行した.経頸部法にてアプローチし,内頸静脈,総頸動脈,舌下神経を保護しながらその深部にある腫瘍を露出した.頭側および尾側方向に剥離を進めたが,神経とは連続していなかったため被膜を含めて摘出した.術後交感神経や舌下神経など神経脱落症状を認めなかった.病理組織所見では,リンパ球浸潤を伴う線維性被膜を有し一部に出血性変化を伴うsolid and cystic tumorで,紡錘形の腫瘍細胞はdesmin,CD99,CD68,EMA陽性であった.以上からangiomatoid fibrous histiocytomaと診断された.
本疾患は若年者(平均年齢17歳)の四肢(65%),体幹(28%),頭頸部(7%)に発生する由来組織不明でまれな中間悪性腫瘍である.通常完全摘出されれば問題ないとされるが,局所再発率が12%,転移率が1%との報告があり注意を要する.術後治療として放射線療法も考慮されるが,若年発症の疾患であるため放射線誘発癌の危険性もあり慎重に方針決定する必要がある.

2016/06/23 18:06〜18:42 P26群

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